Photo Etching
フォト・エッチングについての個人的技法書
ここに記す技法は私(藤田修)の銅版画制作に関する個人的、かつ専門的な技法解説です。私の作品を所有するコレクターの方々や、版画を専門に学んでおられる方々には、多少の興味を持ってごらん頂けるかもしれません。が、ここにはかなり、企業秘密的なものもあります。ですから、くれぐれもご自分だけにとどめていただくか、見なかったことにしてください。もしかしたら、けっこういい加減な情報も含まれているかもしれませんよ。な〜んてね。
1 感光液
銅板を磨く。液体ピカールを使用。(製版用銅板の場合はホワイトガソリンで拭くだけでも良い。)
ピカールをホワイトガソリンで落とす。
小さなチリにも気を付けながら(OA用の静電気除去ブラシを用いてほこりを取ると良い。)銅板にラッカーシンナーで薄めたポジフィルム用感光液、TPR201を流し引きする。TPRとシンナーは試験管でよく混ぜること、混ぜ方が不足すると感光面がまだらになるような気がする。(TPRとラッカーシンナーの割合は5:1とする。但し、ポジフィルムがOHPシートのコピー仕上げの時は2:1とする。)
しばらく(2〜3分)何かに立てかけて、TPR液をなるべく薄くする。
この時、版の端に感光液が一部溜まるので、きれいな布でその部分だけふき取る。
次に、しばらく版を平らに置く。平らにすることによって、感光液が均一になる。
次に、高温の温風を20分〜30分当て、溶剤を完全に飛ばす。(温風はガス温風ヒーターが望ましいが、ヘアードライヤー1000W以上でも代用できる。)*この時の時間は少なすぎてもだめ、多すぎると(1時間以上)バリバリになり、はがれやすい。
完全に溶剤を飛ばし終えたら、版を自然冷却する。
2 露光
感光液を塗った銅版の上にポジフィルムを置く。この時、版とフィルムを密着させるために、フィルムの上から柔らかい布で圧着する。
フィルムの上にガラス板(5mm以上)をのせる。
ガラスの上から万力またはそれに替わるもので、銅版とフィルムを密着させる。(私の場合原始的に机に荷造り用テープで密着させている。)
次に、光源になる500Wのフラッドランプを版の上部に設置する。光源の高さの目安はフィルムの対角線の長さとする。(均一露光を望むときは、ケミカルランプ使用のライトボックスの使用が望ましい。)
露光時間はフィルムの大きさ(光源の高さ)にもよるが、10分から20分程度が良いと思う。(36.5cm×80cmの場合一灯で20分、内左右に分ずつ)版が大きく(1m以上)になった場合はフラッドランプを2灯使う。(フィルムがコピー仕上げの場合は5分前後)
露光が終了したら、すみやかに現像する。
3 現像
現像液はTPR用ポジ用タイプを使用する。この現像液は有機溶剤(ラッカー系)なので、必ず金属用のバットを使用する。
露光の終わった版を現像液に入れる。1、2分で像が現れ始め、7、8分で現像が終了する。この時、感光液がちりめん状になることがある。これは露光不足や感光液の感想不足と思われる。
現像が終わった版を水洗いする。水洗いはシャワー状にして行う。はじめは柔らかい水圧で、次に一気に強い水圧で行う。この時、手のひらでそっと撫でる。
水洗いが終わったら、乾燥させる。乾燥は温風を用いる。(後焼き)後焼きをすることによって、版にしっかりと像が定着する。さらに版を強くしたいときは日光(紫外線)に当てる。(1時間から半日)
(注1 現像液は新品または、2回までの使用が望ましい。)
(注2 感光液、現像液を扱うときは、有機溶剤用の防毒マスクを使用すること。)
(注3 1のから3までの作業は暗室にて行うこと。)
4 腐蝕
露光、現像の終わった銅版の裏に裏止めニスを塗り、防蝕膜とする。この時点では塩化ビニールは不向きである。(感光液を取るときにシンナーを使うので。)
腐蝕させたくないところがあれば、液体グランドで目止めをしておく。
腐蝕液に銅版を入れる。腐蝕液は塩化第二鉄が望ましい。(硝酸では強すぎて感光液が剥がれてしまう。)腐蝕時間は好みにもよるが、5〜20分とする。
一回目の腐蝕を終えたら水洗いした後、銅版クリーナーに浸け、もう一度水洗いする。
フィルムに網かけをしていない場合は、その上にアクアチントを行う。網かけしてある場合はそのままでも良い。(私の場合、150線の網がかかっているが、写真の冷たさを嫌うため、アクアチントを20分行う。)
フォトエッチングの行程が終わったら、感光液をラッカーシンナーで落とす。(古くなった現像液でも代用できる。)感光液が落ちにくい場合は、歯ブラシを使ってこすると落ちやすい。
(塩化第二鉄はグランド膜の時は、20Be〜42Beの間で良いが、TPRの感光液の時は14Be〜15Beの間が望ましい。)
5 エッチング
フォトエッチングの行程を終えたら通常のエッチング作業にはいる。
エッチング、アクアチント、その他の行程を繰り返し行い、好みの作品に仕上げていく。
6 刷り(雁皮刷り)準備
まず、純雁皮紙を用意し、銅版の上にのせ、雁皮の伸びを考えてカットする。(雁皮紙は濡れると長い方に伸びる)
(糊の用意)大和糊に一割程度の木工用ボンド(水性)を混ぜ、水で溶く。この時水は徐々に入れていく。
7 紙の準備
水を張ったバットに用紙を浸す。(ハーネミューレで15分程度)
古新聞の間に湿した紙を挟み、重石をする。(急ぐときでも30分以上、できるだけ半日程度は寝かせたい。)
8 インク詰め
インク(凹版インク3+リトインク3+ダイヤモンドブラック3+少量のプレートオイルで良く練り上げたもの)を厚紙またはゴムベラを使い、版を温めながらていねいに詰めていく。(凹版インクはシャルボネ55985、顔料のダイヤモンドブラックは良く乾燥したものを使うこと。)
ゴムローラー、ゴムベラを使って完全にインク詰めが終わったら、ふき取りにはいる。
9 ふき取り
インクを詰め終えた版は、温かいうちに丸めた寒冷沙で弧を描くように押さえつけながらインクをふき取る。この時点でおよそ8割がたふき取ってしまう。
次に版が冷めてから、人絹でふき取り始める。人絹は耳の方向がふき取りの方向。この時の作業を一番慎重且つ丁寧に行う。
ふき取りを終えたら、ビゾーに残ったインクをウエスに少量のホワイトガソリンをつけ、きれいにふき取る。
10雁皮貼り
水を張ったバットの中へ、ふき取りの終わった銅版を沈める。
水の上に予めカットしておいた雁皮紙をそっと浮かす。(雁皮紙を絶対沈めないよう注意する。)
次に、両手の親指で浮いた雁皮紙の手前両端に触れ、他の指で銅版を引き上げながら、雁皮紙と銅版を一緒に水から引き上げる。(この時点ではまだ版と雁皮紙の間に水が入っているので雁皮紙の位置は調整可能)
位置が決まったら、乾いたタオルで版の真ん中から静かに押さえ、外側に向かって水気を追い出すようにする。
水気をほとんど取ったら、糊付けをする。(この時点で、もし、雁皮が大きすぎたらカッターナイフでカットする。)
次に、先に用意しておいた糊を幅広の柔らかい刷毛を使って雁皮紙につけていく。真ん中から十文字に外に向かって糊をつけていく。
全面につけ終えたらタオルで糊気をほとんどとってしまう。(水気を取ったと時と同じ要領で行う。)
水気がほとんど無くなったら、ウエスに少量の水をつけて、ビゾーに残った糊をきれいにふき取る。いよいよ刷りである。
11刷り
プレス機のベッドプレートに予め用意した、下紙を置く。下紙には版の位置と刷り紙の位置を予め鉛筆でしるしを付けておく。(但し、そのままだと鉛筆のあとも一緒にプリントしてしまうので、必ずストーンパウダーを付けておく。)
所定の位置にプレート(版)を置き、その上に湿しておいた紙をのせる。(紙を扱うときはせっかくの作品を汚さぬために、余った紙片挟むようにしたい。)
フェルトを静かに下ろしプレス機のハンドルをゆっくり回し始める。プレス機によってはプレスを往復した方がより良い刷りが得られる。
(ベッドプレートの上に同サイズの1mm程度の塩ビ板をのせて、間に試し刷りをした版画か、位置決めした用紙を挟むと便利である。)
12乾燥(水張り)
刷り上げられた作品はパネルに水張り用テープで止め、乾燥させる。少なくとも三日間程度日陰乾燥させたい。
photopolymer gravure
感光性ポリマー樹脂版を使用した凹版画です。
別名「ソーラープレート」と呼ばれ、基本的には水と紫外線のみ使用し製版されますので、銅版画に比べ扱いに危険が少ないのが特徴の一つです。感光性ポリマー樹脂版は本来凸版印刷に使用されますが、原稿をネガではなくポジにすることによって、エッチングと同じように凹版になります。仕上がりは、銅版画より、彫りの深さが均一なため、滑らかに見えます。フォトエッチング(銅版画)に比べると繊細な仕上がりになるようです。
技法
まず、原稿になる絵や写真をポジフィルムにおこします。それを、紫外線で感光性ポリマー樹脂版に密着露光をおこない、少量の水によって洗い(ブラッシング)を行い、再び、露光にかけた同時間、紫外線に当てることにより、版表面が硬化します。印刷は銅版画と全く同じです。
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